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世界の医療
ブラジル編
医療格差の国・ブラジルで薬剤費負担を減らすジェネリック
ブラジル・リオデジャネイロ在住 高橋直子
◇無料だが問題を抱える公的医療

 広大な面積を持つ国、ブラジル。一方で、世界でも有数の格差社会とも言われる通り、医療水準も地域、所得による格差が大きいのが事実である。

 ブラジルでは基本的に、全員、SUS(統一保健医療システム)という公的保険に任意加入している。この制度により、公立病院などでは医療費は薬剤費を除き、診療費、検査費、予防接種費、入院費などがすべて無料となる。これはブラジル人だけでなく、ブラジルに在住するすべての人が対象となる。

 すべての人が無料で医療を受けられるという制度はすばらしいが、現実は設備や衛生面の深刻な問題が指摘されている。
 まず第一に、公立病院で診察を受けるにはかなりの忍耐力が必要だ。番号札をもらうために朝早くから並んだり、診察の長い待ち時間、そして不十分な検査設備など、病人に要求される忍耐力は並大抵のものではない。
 公立の緊急病院で、ベッドがなく床に寝かされる患者、不衛生な診察台などといった映像が、メディアでもよく流されている。

◇民間保険に加入すれば高額な手術も無料に

 一方で、民間の保険会社に月々の保険料さえ払えば、レベルの高い医療が受けられる。
 現在の最低賃金は月収で約507レアル(約2万7000円)だが、一般的な民間保険料は月あたり180レアル(約9600円)程度。中流階級層は保険料を払って民間保険会社に加入し、民間の医療機関を利用するのが一般的だ。


▲民間保険のカード。診療所受付でカードを提示しサインするだけで、多くの医療が無料で受けられる。

 保険へ加入したらカードが発給され、保険会社と契約している医師、医療機関での診断が受けられる。
 民間の保険は個人契約と、団体・企業契約、組合契約に大きく分かれている。年齢や選択したプランによって、受診できる病院や医師、また診察・手術代を保険でカバーできるかなど、保障内容が異なってくる。

 民間保険加入者は、例えばCTスキャンは月に一度のみなど上限はあるが、基本的にはいつでも無料で診察、検査が受けられるのだ。
 日本では高額のレーシック手術なども、ブラジルでは保険が全額カバーしてくれる場合があり、大助かりだ。

 例えば私の友人は、月に一度耳鼻科と皮膚科、胃腸科の医師の診察をうけているが、診療代、検査にかかる費用はすべて無料である。
 ただし、人気のある医師の場合、予約から診察までに1ヶ月以上かかる場合もあり、緊急の場合は指定の緊急病院に足を運ぶのが一般的だ。また待ち時間も長く、診察を受けるには、半日会社を休む必要がある場合も多いのが現実だ。

◇細分化された医療機関

▲どこにどの分野の診療所があるかをインターネットで検索。民間保険会社と契約している自宅近くの医療機関を選ぶことができる。

 また、ブラジルの医療はじつに細かく役割が分担されている。
 定期的に通う小児科や婦人科などは個人経営の医院、もしくは公立の診療所。入院や手術は病院で、血液、X線などの検査は検査場、薬は薬局で購入する。

 私は民間保険に加入しているので、すべて民間の医療機関を利用している。
 たとえば、定期的に通っている婦人科ではこんな具合だ。かかりつけの医師に診療日を予約し、診察。その後必要な検査項目を書いてもらった紙を持って検査場へ。検査結果を待って、再びかかりつけの医師のもとに戻った後、処方せんをもって薬局へ。
 人気のある医師の診療所はいつも満員で、予約をして行っても、待合室で長い時間待たされる。その上さらに検査をして診療所に戻るわけだから、なにしろ時間がかかるのだ。

 そして、さらに入院、手術となった場合には、かかりつけの医師が指定した病院で手続きを行ない、麻酔師、助手などは医師が集合をかける。民間保険に入っている場合はほとんどが保険でカバーされるが、支払いは医師、麻酔師、病院とすべて別々である。

◇ジェネリック医薬品の活躍

▲ブラジル全土に約800店舗を展開する大手薬局チェーン。

 そして、SUSも民間保険もカバーしてくれないのが薬剤費である。医薬品は医師が処方し、薬局で購入する。ブラジルは薬局が多い国で、学校やパン屋より多いといわれている。
 薬剤費は家計にとって大きな負担となっている。

 ジェネリック医薬品がブラジルに入ってきたのは1999年のことだ。2008年には医薬品全体の18%がジェネリック医薬品であると言われ、10年間でこの市場は急成長している。

 2007年にブラジルのルラ大統領が抗エイズ薬の特許強制実施権(特許権者の許諾を得なくても医薬品などの特許発明を使用する権利を第三者に認めること)に署名をしたことは、世界的に有名である。これにより、抗エイズ薬のジェネリック医薬品の製造、輸入が可能になった。
 「貿易よりも国民の健康のほうが大切」をうたい文句に、WTO(世界貿易機関)が、製薬産業が不当な価格設定を行った際には特許強制実施権を認めるというルールを適用したのだ。これにより薬の値段は3分の1へと減少し、ブラジル政府は海外から大量の抗エイズ薬のジェリック医薬品を購入できることになった。

 ブラジルでは、ジェネリック医薬品は新薬よりも平均して35%安いとされている。ジェネリック医薬品の信用度は高く、近年では、医師の処方せんにあらかじめジェネリック名が書き込まれている場合も増えているようだ。


▲薬局の入り口の、ジェネリック医薬品購入を勧める広告。

▲薬局に並ぶジェネリック医薬品 「G」のマークが目印。

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