
ドバイで人口の約2割弱といわれている地元の人々(アラブ首長国連邦人)の教育費、光熱費、医療費が無料なのは有名な話だ。残りの8割が外国人労働者で占められているこの国では、雇用主が責任を持って保険に加入しなければ労働許可やビザが下りない仕組みになっている。 これは潤沢な国家予算で国民の権利と福利厚生を充実させると同時に、雇用主に保険加入を強制することによって、外国人労働者にも健康で安全な職場環境を提供し安心して働けるよう、また具合が悪くても治療が受けられない人や、健康上の理由で失業し路頭に迷う人が出ないようにして、国家の治安を守るという理由もある。 なお雇用主が国の保険証を申請するか保険会社の保険に加入するかは自由で、通常管理職以上の労働者向けには福利厚生の一環として保険会社の保険に加入することが多い。 国が発行する保険証は“ヘルスカード”と呼ばれ、ドバイの国民であれば年齢に応じてAED25〜AED100(約525円〜2,100円)で4年間有効のものが、外国人にはAED100〜AED300(約2,100円〜6,300円)で1年間有効のものが発行される。また手続きの際に外国人には健康診断が義務付けられていて別途AED200(約4,200円)がかかる。※AED=アラブ首長国連邦ディルハム このように外国人の負担が大きくなっているものの、この料金を支払うのはたいてい雇用主であるため、外国人個人の負担になることは少なく、自国民は優遇、外国人労働者には配慮、企業からは徴収……といった仕組みができあがっている。 このヘルスカードがあれば、“政府の病院”と呼ばれる公立の病院で無料診察してもらえるほか、検査や大がかりな手術、入院の対応、投薬もしてくれる。もちろん、保険に加入していない旅行者などもこの公立病院のサービスを有料で利用することができる(診察代AED250=約5,250円〜)。 ただ問題なのはたいていの場合、公立病院では診察までに時間がかかり、待合室は長蛇の列、夜間には救急の窓口でさえ外に人があふれていることも多々ある。 一方で有料ではあるが、予約も取りやすく保険会社の保険で診療してもらえるのが私立の診療所や病院だ。料金は保険会社負担で、保険の範囲内の疾患であれば初診自己負担金(AED70=約1,470円)を支払うだけで診察代と薬代をまかなってくれるというわけだ。 処方された薬を受け取るには、公立、私立病院のいずれの場合も、院内に併設されている薬局、または近隣の提携している薬局に処方せんを持ち込む。
市内には数多くの薬局があり、薬の販売も比較的自由だ。ショッピングセンターにあるドラッグストアでは、店の入口側にシャンプーや化粧品などの日用品、奥にはカウンターがあり、薬剤師が常駐している。 症状を訴えるとそれに合った薬を薬剤師がカウンターで販売してくれるので、病院に行くほどではない症状でお薬がほしい場合に、非常に便利である。 私も病院に行く時間がない時にお世話になったことがたくさんある。時には「病院に行ったほうが良いよ」とアドバイスしてくれることもある。 こうした薬局はショッピングセンターのほか、車社会を反映してガソリンスタンドに併設されていることも多く、ドライブスルーや24時間営業の店舗も数多い。
アラブ首長国連邦内では2011年6月に通算3回目のジェネリック医薬品の値下げが保健省から通達された。 これは、国が保健省と協力して生活習慣病の蔓延を防ぐための施策として行なわれており、特に石油発見から50年が経ち、経済的に大きな発展をとげた現在の社会問題である糖尿病、高血圧といった生活習慣病を防ぐためのキャンペーンである。なお、更なる値下げの通達が2012年の上半期にも予定されている。 ![]() ▲ドイツ・メルセデスベンツ社製の救急バス。 このように、医薬品の価格を下げることは、自国民が医薬品を入手しやすくなるという利点もある一方で、近隣湾岸諸国から病気治療のために訪れる人たちを誘致する目的もある。いわゆる「メディカルツーリズム」と呼ばれる方策で、外国からの訪問客をより多く受け入れ、消費活動を促すやり方は、さすが商業の街ドバイといった感じである。
これは土地がふんだんにあり、幹線道路は片道8車線もあるというドバイならでは。日本で使うとなかなか現場にたどり着けないばかりか道も曲がれないのでは、といらぬ心配をする。
|