カラダの豆事典

突然襲ってくる血管の病気

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血液が通る血管は、まさしく生命線といえます。日本人の死因1位はがんですが、2位の心疾患と3位の脳血管疾患の原因は、血管の異常です。健康で長生きするためにも気を付けたい血管の病気について、ゆうあいクリニック理事長の片山敦先生に伺いました。

症状とメカニズム

動脈の異常は命に関わる

人間は約60兆個の細胞から構成されているといわれています。その細胞の1つ1つに栄養素や酸素を運び、老廃物を運び出すのが血液です。その血液の通り道が血管であり、それは生命を維持するための大切な〝パイプライン〟だといえます。そのパイプラインが詰まったり、破裂したりすれば、私たちの健康に深刻な影響を与えかねません。

血管には心臓から全身に血液を送る動脈、全身の血液を心臓に戻す静脈があります。
動脈の病気はいろいろありますが、代表的なものの1つである大動脈瘤は、胸部や腹部の動脈にコブができる病気です。コブができると血管が膨らむなどして、その部分は脆くなり、突然破れて出血することがあります。自覚症状はなく、健康診断などで偶然発見される場合もあり、コブの大きさにより、経過観察や手術が行われます。

また、大動脈解離は、血管壁が弱くなり、突然裂けてしまう病気です。破裂する場所によっては、出血した血液の流れで心臓が圧迫され、命に関わってきます。大動脈瘤、大動脈解離とも、高血圧や動脈硬化など、血管に悪影響を与えている因子が何かしら関係していると考えられています。

代表的な静脈の病気の1つが、下肢静脈瘤です。動脈から流れる血液は心臓からの圧力で押し出されますが、静脈を通って戻るときは、下肢(かし。あしのこと)の場合、下から上へと重力に逆らうことになります。そのため、下肢においては、筋肉が収縮することで血液を押し上げたり、血管についている弁によって逆流を防いだりしています。しかし、筋肉や弁の機能が低下すると、下半身の静脈に逆流現象が起こり、コブ状のものができてしまいます。これが下肢静脈瘤です。自覚症状としては下肢の痛みやむくみ、だるさなどが挙げられます。

動脈硬化のメカニズム

血管の病気を防ぐうえで最も注意したいのが、動脈硬化です。動脈硬化とは、動脈が狭くなるなどして、正常な働きを維持できない状態を指します。その原因となるメカニズムは次の通りです。

1)高血圧などが原因で血管の内皮細胞に傷がつくと、そこにLDL(悪玉コレステロール)が入り込み、酸化されて酸化LDLとなる
2)白血球の一種のマクロファージは酸化LDLをどんどん食べていき、やがて死滅し、コレステロールや脂肪をたっぷり含んだプラーク(粥種)となる
3)プラークが蓄積していくと、血管は部分的に狭くなり、血流が悪くなる。また、プラークが破れると血栓(血の塊)ができ、血流が完全に途絶えることもある

動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる病気にもつながりかねません。動脈硬化が心筋へ血液を送る冠動脈で起これば、血管が詰まり、狭心症や心筋梗塞の主な原因になります。脳の血管で起きれば脳梗塞になり、一命をとりとめたとしても片側の手足の麻痺などの後遺症が出ることもあります。また、頸動脈で形成された血栓がはがれて、脳の動脈まで移動して閉塞を起こす、脳塞栓などのケースもあります。

治療法とセルフケア

生活習慣病の治療を受ける

心筋梗塞や脳梗塞など、動脈硬化が原因で起こる病気は、突然やってきます。そのため、異常がわかったら、少しでも早く医療機関で治療を受けることが大切です。また、動脈硬化は糖尿病、高血圧、脂質異常症などの病気や喫煙が危険因子となります。高血圧なら降圧剤を処方してもらうなど、これらの生活習慣病の治療を受けることが、動脈硬化による病気の予防に大いに役立つはずです。

大きな大動脈瘤は手術が必要

大動脈瘤はコブが小さいうちは、高血圧に注意しながら経過観察を行います。コブが大きくなったら、胸部や腹部を切開し、その部分の血管を人工血管に置き換える、人工血管置換手術を行います。また、最近では、ステントと呼ばれる金属に布を張ったものを鼠蹊部(そけいぶ)から挿入し、コブの付近で風船のように膨らませて、動脈瘤に血液を流れないようにすることで破裂を防ぐ、ステントグラフト手術が主流になってきました。人工血管置換手術と比較し、身体への負担が少ないのが特徴です。また、大動脈解離でも、大動脈瘤同様、人工血管置換施術、ステントグラフト手術が行われます。

血液サラサラで動脈硬化予防

脂質異常症や糖尿病などで、いわゆる〝ドロドロ血液〟になると、動脈硬化を起こしやすくなります。その反対に〝サラサラ血液〟にすることが動脈硬化の予防に効果的です。血液をサラサラにするには、次のような食品成分や運動が鍵を握っています。

・DHA・EPA
イワシやサバなどの青魚に多く含まれる不飽和脂肪酸の一種で、常温で固まりにくいという性質があります。血管の弾力性を高め、酸素の運び役である赤血球の柔軟性を向上させます。

・ポリフェノール
緑黄色野菜や果物などに含まれている化合物の総称です。LDLの酸化を防ぎ、血流の改善に役立ちます。ポリフェノールはベリー類や黒豆、小豆、ナス、カカオ、緑茶などに特に多く含まれています。

・ビタミンC・E
ポリフェノール同様、LDLの酸化を防ぎます。ビタミンCは赤ピーマンやレモン、ビタミンEはカボチャやアスパラガスなどに多く含まれています。

・有酸素運動
有酸素運動は脂肪をエネルギー源として燃焼し、HDL(善玉コレステロール)を増やす働きがあります。HDLは動脈硬化の原因となる血管壁に張り付いたLDLを回収してくれます。

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