カラダの豆事典

「もの忘れ」は生活術で改善できる

  • シェア
  • ツイート

「芸能人や知人の名前がすぐに出てこない」「物をどこに置いたのか忘れてしまう」といったことが、最近多くなったと感じることはありませんか? 今回は浴風会病院名誉院長の大友英一先生に、「もの忘れ」のメカニズムとその対策、脳を活性化させる生活術について伺いました。

老化による「もの忘れ」と 認知症による「もの忘れ」は違う

日常生活でもの忘れが頻繁になると、「もしかして認知症では?」と不安になりますが、「もの忘れ」には自然な脳の老化によって誰にも起こり得るものと、認知症によるものがあります。 人生80年時代が実現して、高齢者の割合が増えるに従い、認知症は身近な問題となりました。

では老化に伴う「もの忘れ」と、認知症による「もの忘れ」の違いはどこにあるのでしょうか。

たとえば「今朝の新聞どこに片付けたの?」と家族に聞かれたとき、「新聞?私は片付けてない」と答えるのが「アルツハイマー型認知症」で、これは新聞を片付けたこと自体を忘れてしまいます。

「私は新聞を読まないから、知りません」と答えるのが「脳血管型認知症」で、この場合は新聞を片付けたことを忘れているのに加え、言い訳をする傾向があります。

一方、単なる「もの忘れ」の場合は、「確か、押入れかな?いや、テレビの上だったかな?」と、片付けたこと自体は覚えていますが、どこへ置いたか思い出せない状況です。 つまり、自分が「もの忘れ」をしているという自覚があるということは、健康な証拠でもあります。

認知症は、現在のところ、明確な原因も確かな治療法も確立されていませんが、脳の老化を防ぐことが予防につながると言われています。脳を活性化する生活習慣を意識して実践してみましょう。

老化による「もの忘れ」と認知症による「もの忘れ」の違い

  • 老化による「もの忘れ」

    • ものごとの一部分を忘れる
    • 何かきっかけがあれば思い出す
    • 日時、場所、家族の顔を忘れることはない
    • もの忘れを自覚できる
    • 日常生活や社会生活に支障をきたさない
    • 症状は進行しない
  • 認知症による「もの忘れ」

    • ものごと全てを忘れてしまう
    • もの忘れは持続的で、直前に食事をしたこと(短期記憶)などを忘れ、次第に過去の記憶(長期記憶)も忘れる
    • 日時、場所、家族の顔なども忘れる
    • もの忘れの症状を自覚できない
    • 日常生活、社会生活に支障をきたし、介護が必要
    • 症状が進行する
「アルツハイマー型認知症」は老年後期に多く、人格も著しく変化する。「脳血管性認知症」は大きな血管が破れたり詰まったりすると「脳卒中」の症状が出るが、小さな脳梗塞が多数できた場合などは、意欲の減退、性格の変化、運動麻痺などと併せて、「まだら認知症」(正常な時と、認知症状が混ざり合う状態)と言われる症状がみられる。

脳の老化のスピードは 遅らせることができる

同じ年齢でも若く見える人と老けて見える人がいるように、内臓や器官の老化のスピードにも個人差があります。特に個人差が大きいのは血管、骨、そして脳です。いずれも生活習慣次第でスピードを遅らせることができるのです。 脳の老化によって起こる「もの忘れ」、つまり記憶力の低下も、心がけ次第である程度防ぐことができます。

脳の中でも人間の意識活動の中心になるのが「大脳」。大脳の外側にある「大脳皮質」が高度な知的活動を司っています。 「大脳皮質」は想像力や思考力を司る「前頭葉」、色や形の情報処理や聴覚、記憶を司る「側頭葉」、視覚を司る「後頭葉」、運動力や触覚を司る「頭頂葉」に分かれています。

大脳皮質には神経細胞が140億個あるといわれ、それらが複雑に絡み合い、そのつながりによって、脳が働くのです。 記憶を司るのは「側頭葉」、とくにその内側にある「海馬」という部分。人が認識したことや体験して得た情報を一時的に記憶し、保管します。 保管された情報の中で、刺激(物事を思い出すなど)を受けたものが大脳に送られて長期に記憶され、基本的には一生脳内に残ります。刺激を受けなかった情報は必要のないのものとして消去されます。 つまり、たびたび思い出す、書く、復唱するということを繰り返すことで、記憶は長期記憶しやすくなるのです。

脳の神経細胞は毎日死滅していくので、年とともに脳は萎縮し、軽量化していきます。この萎縮も個人差があり、脳を使わない生活をしている人ほど、萎縮は激しくなります。 また、認知症を引き起こすアルツハイマー病には、脳の大脳皮質に老人斑(シミ)が多く見られますが、こちらも脳を使わないと多く見られるようになります。脳の萎縮を止め、老人斑を作らないためにも、脳を働かせることは重要なのです。

脳の老化を予防する 脳力アップ生活術8

(1)「文章を読む」、「文章を書く」、「計算する」を習慣にする
脳は、日々受ける刺激に対して、長年の経験から得た知識や記憶を総動員し、熟考し、判断し、決断、表現します。 このような働きをコントロールしているのが前頭葉にある「前頭前野」。この部分を十分に使うことで、脳の老化を防止できます。 読書は黙読、音読いずれも効果がありますが音読するとより効果的です。日記や手紙を書くようにする、計算は電卓を使わないなど、脳を働かせることを毎日続けることが大切です。
(2)抗酸化作用のある食品を食べる
酸素とブドウ糖を大量に必要とする脳は、活性酸素が蓄積しやすい臓器です。活性酸素に対して抗酸化作用を持つのがビタミンC・E、β-カロチンです。 ビタミンCが多い食品はかんきつ類、パプリカ、パセリなど。β-カロチンはニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜に多く含まれます。 野菜と果物を多くとる人は認知症の発症率が65%も下がったという研究結果もあります。
(3)料理を積極的にする
献立を考える、材料をそろえる、調理する、盛り付けをするなど、料理には多くのプロセスがあるため、脳の活性化に役立ちます。また、視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚と五感を総動員させるので脳はフル稼働します。 料理は脳をトレーニングする絶好の機会であり、外食では難しい栄養のバランスを保つこともできます。
(4)考えながら手先を使う趣味を持つ
手や指には、触覚や痛覚などたくさんの末梢神経が集まっています。ここを働かすことで、前頭葉、頭頂葉など多くの部分が刺激されます。無意識に動かすのではなく、考えながら集中して動かすことが大切です。 ピアノなどの楽器演奏、編み物、陶芸や園芸、日曜大工など。仕事や日常生活以外に頭や体を使うことで脳の働き方も多様化します。
(5)早足ウォーキングを毎日10~20分続ける
人間の体は、左側の動きを右脳の大脳皮質が、右側の働きが左脳の大脳皮質が司っています。体全体を動かすウォーキングなら脳全体が活性化することができます。 習慣化するコツは日常生活に取り入れること。通勤や買い物のときに、早足で歩くようにします。早足とは時速11㎞、冬でも汗ばむくらいの速さで、歩く時間は10~20分を目安にしましょう。 また、エレベーターやエスカレーターを使わず階段を利用するとよいでしょう。
(6)パソコンや携帯電話などの使い方を人まかせにしない
生活に欠かせないパソコンや携帯電話。新しい機能やソフトなど、難しいからといって人まかせにせず、自分で使いこなせるようにしましょう。 ただし、便利だといって漢字や言葉の意味をパソコンで探したり、計算も電卓機能に頼らず、辞書を引いたり、暗算をするようにしましょう。
(7)脳力アップのカラオケ法
歌を歌うだけでもストレス発散になり、腹式呼吸をすることで肺機能があがるなど、カラオケには健康効果があります。 脳の働きをアップするためには、画面の歌詞を見ないで覚えるようにしましょう。歌詞を手書きにすると、文字を眺めるよりラクに覚えることができます。 また、友人や家族の歌を漫然と聞くのではなく「あの人はリズム感があるな」など、感じたことを意識的にインプットします。そして、そのインプットしたことを感想として相手に伝えることで、アウトプットするのです。これも脳のトレーニングにつながります。
(8)6~8時間睡眠で脳をしっかり休ませる
細胞の新陳代謝は夜、寝ているときに活発に行われます。脳下垂体から、新陳代謝を促す成長ホルモンが分泌されるのです。脳の働きを活発にするためにも、睡眠をとってしっかり休ませることが重要です。 脳の一部が働いているレム睡眠と、脳がほとんど働いていないノンレム睡眠、この2つの状態が繰り返されて睡眠となるので、6~8時間しっかり眠らないと脳を休めたことになりません。

認知症予防10カ条

  • 1ヶ条 塩分と動物性脂肪を控えたバランスのよい食事
  • 2ヶ条 適度な運動を行い、足腰を丈夫に
  • 3ヶ条 深酒とタバコはやめて、規則正しい生活を
  • 4ヶ条 生活習慣病の予防、早期発見、治療を
  • 5ヶ条 転倒に気をつけ、頭の打撲を防ごう
  • 6ヶ条 興味と好奇心を持つように
  • 7ヶ条 考えをまとめて表現する習慣を
  • 8ヶ条 細かい気配りをしたよいお付き合いを
  • 9ヶ条 いつも若々しく、おしゃれ心を忘れずに
  • 10ヶ条 くよくよしないで明るい気分で生活を
カラダの豆事典 一覧ページへ
あなたにオススメ記事

家族の対応も重要 認知症

今後も増加するとされる「認知症」と医療費

認知症と似た病気

いまから始める認知症を防ぐケア

夏にも多い脳梗塞