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病気と医療の知って得する豆知識

放置しておくと怖い! 大人の虫歯

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監修/鈴木浩司先生(日本大学松戸歯学部専任講師・歯学博士)

なんだかこの頃、歯が茶色くなってきたなー。でも、痛くないから虫歯ってわけじゃないだろう。歯医者はコワイから、行くのいやだし。まあ、総入れ歯にはなりたくないから、歯の手入れはしたほうがいいと思うんだけど……。

大人の虫歯は痛みが出にくい

6月4日は「6(む)4(し)」にちなんで「虫歯の日」。そして6月4〜10日は「歯と口の健康週間」と、にわかに歯がクローズアップされる6月。とはいえ「歯医者に行くのは、歯が痛くなった時だけ!」という人も多いのでは。
実は、大人の虫歯は、痛みがないままに進行することを知っていますか?
子どもの虫歯と大人の虫歯は、できる過程が違います。子どもの虫歯は痛みが出やすかったり、急に歯に穴が空いて歯医者に行かざるをえない状況に。しかし、子どもの虫歯は近年、親がしっかり歯磨きチェックを行うなどをしている成果で、どんどん減っているのです。
一方、大人の虫歯は、痛みが出にくく、自覚がないまま進行するため、治療が遅れがち。そんな大人虫歯についてお話しします。

歯と歯ぐきの境目が要注意

子どもの頃の虫歯を思い出してみてください。「噛む面」のシワが寄ったようなところが茶色くなって、虫歯ができていましたよね。子ども虫歯の主な原因は、歯の深い溝にたまる汚れが取り切れていないこと。おやつのカスが残るなどして、虫歯の原因になっていたのです。

しかし、大人の虫歯は、子どもとは違うところが多くあります。まず虫歯ができやすい場所は、歯と歯ぐきの境目。というのも、歯周病や加齢によって、歯ぐきの位置が下がってくるためです。
歯は本来、硬い「エナメル質」でおおわれていますが、歯ぐきが下がって露出する部分は、やわらかい「セメント質」や「象牙質」でできています。そのため虫歯になりやすいのです。
歯のくいしばりグセがある人や、歯ぎしりをする人は要注意。圧力で、歯と歯ぐきの境目が壊れて、歯ぐきの根元が露出し、虫歯になりやすくなるからです。

また子どもの頃、治療をした歯の詰め物の間から虫歯ができることも。歯と金属のわずかな境目から虫歯ができたり、虫歯の悪いところがとりきれておらずに菌が繁殖したり。ガムなどを噛んでいるとき詰め物がポロッと取れて、中が見えた時には虫歯が進んでいるということもあります。
さらに、詰め物がとれたところは、やわらかい象牙質なのでどんどん虫歯が進行します。詰め物が取れたら、痛みがなくてもすぐに歯医者で治療しましょう。

“広くて浅い”のが大人の虫歯

大人と子どもの虫歯には、できかたにも違いがあります。子どもの虫歯は、一般的に“狭くて深い”。入口は狭くても、奥の方で進行していて、ある日、天井がドンと抜けるように穴が空くということがあります。
子どもの虫歯は、歯の神経まで達していることが多いため、痛みを感じます。大人になると、よほど歯磨きができてない人でないかぎり、こうした虫歯はできにくいのです。

一方、大人の虫歯の特徴は‟広く浅い“こと。この状態を「慢性(まんせい)う蝕(しょく)」といい、歯は茶色っぽかったり、黄ばんだ感じになります。しかし、削ってみるとさほど深くなく、浅く広範囲に広がって歯を弱めていきます。 浅いため、神経まで到達せず、痛みを感じることは少ない傾向があります。だから、気づきにくいのが大人の虫歯なのです。

しかし、ひどい虫歯の治療のため、すでに神経を取っている場合、虫歯が進んでも痛みはでません。そのため、どんどん虫歯が進行し、あるとき急にポキッと歯が折れる、ということも。 そして、神経のない歯は自浄作用がないため、放置しておくと茶色に変色していきます。1本だけ歯が茶色くなってきたら、それは神経のない歯かもしれません。

これが大人の虫歯になりやすい人

口の状態や歯の手入れ方法の違いで、虫歯のできやすい、できにくいがわかります。大人虫歯になりやすいかどうか、下記のリストでチェックしてみましょう。

  • 朝起きたとき、口が渇いている感じがする
  • 唇がかさつきやすい
  • いびきをよくかく
  • 歯の表面が茶色くなりやすい
  • たばこを吸う
  • 甘いものなど、間食をよく食べる
  • スポーツドリンクや清涼飲料水をよく飲む
  • 歯磨きにフロス・歯間ブラシを使っていない
  • 寝る前に歯を磨かないことがよくある

チェックが1つでもついた人は、大人の虫歯になりやすい人です。

口呼吸していると、口内が乾きます。唾液は口の中をきれいにする役割があるので、口呼吸で乾燥した口内は虫歯ができやすい状態に。唾液で歯をきれいにできないので、歯が茶色く着色しやすくなる傾向が。そして、いびきをかく人も口呼吸になっています。

また、スポーツドリンクは体にいいイメージですが、糖分が高いのが問題です。「歯が出てこない」という子どもの歯を診察したところ、スポーツドリンクばかり飲んでいたため、糖分が原因で歯が溶けてしまったという事例もあるため、要注意です。

歯の磨き方には2通りある

大人になると、虫歯より歯周病対策と言われますが、実は、虫歯対策と歯周病対策では歯の磨き方が違います。
虫歯対策なら、歯の表面をしっかり磨くのが重要です。歯並びが悪くデコボコしていたり、段差があるところはしっかりと。また大人虫歯ができやすい、歯と歯の間を重点的に。
一方、歯周病では、歯と歯ぐきの間をていねいに磨くことが必要です。この両方をしないと、虫歯も歯周病も防げません。
食後は、虫歯対策として歯の表面を磨く。そして、夜寝る前には、テレビでも見ながら、歯ぐきのまわりを10~20分くらいかけてじっくりと磨くのがおススメです。

歯ブラシの力は軽く

歯ブラシは力を入れすぎないよう、にぎるのでなく、ペンを持つ形で軽く持ちましょう。力の入れ具合は120gが理想です。歯ブラシを手に持ち、いつも歯を磨くときくらいの力の入れ具合で、台所用のスケールを抑えてみてください。メモリの重さが120gを上回っていたら、力が入り過ぎということです。
また、聞き手が右手の場合、左はそのままで磨けますが、右側は磨きにくいので、持ち方を変えましょう。

親しらずは口を横に開いて磨く

「親しらず」の部分は、歯の奥で磨き残ししやすい部位。奥の歯を磨くときは、大きく口を開ける、と思いがちですが、奥歯を磨くときは口をタテに開くのでなく、むしろ口を閉じる感じで、横にギュッと開くのがポイント。奥の歯が磨きやすくなります。

20歳すぎたらフロスを使う

歯ブラシの選び方は、ふだんは「ふつう」の硬さで。夜寝る前に、時間をかけて歯と歯ぐきの間をキレイにするときは、歯を傷つけないように「やわらかめ」を使うのがよいでしょう。

また、歯ブラシだけで歯をキレイにするのは難しいと心得て。歯と歯の間をキレイにするため、20歳過ぎたらフロスを使う習慣をつけて。そして歯周病が気になる年齢になったら、歯間ブラシで歯と歯ぐきのすき間をキレイにしましょう。ここにつまったものが、歯周病の原因となるからです。

歯磨きは1日5回がベスト

歯を磨くのは、1日5回がベスト。朝起きたとき、3食後、夜寝る前。朝起きたときに磨くのは、寝起きは口内に「便に含まれているのと同じ」というくらい大量の菌が発生しているため。そして、菌が発生する前の寝る前もしっかりと。 5回が難しい場合は、朝起きたときは口をしっかりすすぐ。また、夜を1回にするなら、もうこの後は何も食べない、お茶も飲まないというタイミングで、時間をかけて磨きましょう。

また、夜寝るとき、口呼吸になってしまったりいびきをかく人は、鼻呼吸に導くためのテープを使ったり、マスクをして寝ると口内の乾燥を防げます。

今夜は録画したドラマを見ながら
じっくり歯磨きしよ~っと。

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