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未来のヘルスケア ショートショート

カロリーイーター 田丸雅智

木村良平

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ショートショート「カロリーイーター 」

カロリーイーター 田丸雅智

祐二の趣味は、ズバリ「食」だ。
大衆食堂から高級フレンチに
至るまで、評判の店だと
聞きつけると祐二はすぐに訪れて、
自分で味をたしかめるのが好きだった。
唯一の悩みは、食費がかさんで
お金がまったく貯まらないことだ。
母親の典子からも
「将来をちゃんと考えなさい」と
小言を言われつづけていた。
独身貴族としても
悠長に構えてはいられなかったが、

01/11

それ以来、祐二は意識して
たくさん食事をとるようになった。
すべてはカロリーイーターを
養うために──。
祐二の趣味は、今やすっかり、
食からカロリーイーターの
飼育へと変化した。
今も昔も、
食費がかさむことには変わりないが。

11/11

祐二は焦った。
三匹のカロリーイーター
「カロ」とも「リー」とも「イータ」とも、
絶対に別れたくはなかった。
祐二は叫んだ。
「いやです!逆にストレスですよ!
この子たちは手放しません!」
そんなこんなで、
祐二は以前と同じ
食事量に戻すことを宣言し、
カロリーイーターを
没収されるのを回避した。

10/11

そんな中、
やがて困った事態になってしまった。
次の健康診断で、
医者からこう告げられたのだ。
「健康状態は良好ですね。
食事が適切な量に減ったことも
大きいのでしょう。
ただ、いまの食事量だと、
カロリーイーターに
栄養をとられすぎてしまいます。
なので、カロリーイーターを
三匹から一匹に減らしましょう」

09/11

カロリーイーターは匂いにつられて
ひょこひょこと外に出てくるのだ。
その顔はぶすっとしていて、
愛嬌があった。
祐二は、三匹それぞれに
名前をつけたりもした。
そうするうちに、祐二は食への興味が
不思議なほどになくなった。
その代わり、カロリーイーターの
世話に夢中になった。
祐二はこの不思議な共生を、
心の底から楽しんだ。

08/11

これによって
新しい共生のフェーズに
突入することになるのかなぁ、と。
実際、カロリーイーターを
飼いはじめてから、
祐二はずいぶんスリムになった。
それだけではない。
祐二はときどき、
カロリーイーターを取りだして、
愛でるように観察するようにもなった。
空腹のときに横になって
口元に食べ物を置いて待っていると、

07/11

「あなたの食事量から逆算すると、
そうですね、
3匹を処方しておきましょう」
薬局で渡されたのは、
ケースに入った3つの小粒の卵だった。
家に帰ると、
祐二はさっそくその卵を飲んでみた。
卵は胃の中ですぐに孵化して、
1センチほどの成魚になるという。
祐二は思う。
人類は菌や寄生虫と共生して
進化してきた生き物だけれど、

06/11

医者によると、カロリーイーターは
食べるのを我慢したくない人や、
付き合いでたくさんの量を
食べざるを得ない人のために
生みだされた生き物らしい。
頼りすぎは禁物だが、
これを飼えば、要するに
好きなものを好きなときに、
好きなだけ食べられるのだという。
そんな便利なものがあるのなら、と、
祐二は「ぜひ」とお願いした。
医者は言った。

05/11

「カロリーイーター?」
祐二が首を傾げると、
医者は答えた。
「人の胃の中で生きられる、
遺伝子改良された魚のことです。
干潟にいる
ムツゴロウのような感じで
ペタッと胃の壁に張りついて、
入ってきたものを食べて
運動エネルギーに変えて
消費してくれるんですよ。
もちろん、排泄物は無害です」

04/11

そして、医者はこう告げた。
「典型的な栄養分の摂りすぎです。
食事を減らす必要があります」
医者に提示されたお手本の食事の例を
見て、祐二は思わず悲鳴を上げた。
「無理ですよ!
ぼく、食べるのが趣味なんです!
こんなの、逆にストレスですよ!」
すると、医者がこう言った。
「なるほど、分かりました。
それなら、カロリーイーターを
処方しておきましょう」

03/11

祐二なりには、満足のゆく毎日を
送っていた。
健康診断に引っかかったのは、そんな折だ。
もともと大食いの運動不足で、
30歳を超えたあたりからは
お腹のでっぱりも目立ちはじめていた。
が、あまり本気で考えず、まあ大丈夫
だろうと、祐二はお気楽に構えていた。
だから、再診で医者から言われた
一言は、なかなかにこたえた。
「このままだと、
生活習慣病になりますよ」

02/11
木村良平

木村良平

1984年7月30日生まれ。東京都出身。劇団ひまわりに3歳で入団。子役として活動していたが、2009年『東のエデン』の滝沢朗役で初主演を務める。代表作は『黒子のバスケ』黄瀬涼太役、『ULTRAMAN』早田進次郎役など。2012年、第6回声優アワードにて助演男優賞を受賞。趣味は音楽や映画の鑑賞、読書、ゲーム、YouTubeなどでゲーム実況の動画を観ることで、2020年2月ついに自身のYouTubeチャンネルを開設