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医薬品開発における当社のニトロソアミンのリスク予測技術が旭化成創剤開発技術賞を受賞
沢井製薬株式会社(本社:大阪市淀川区、代表取締役社長:木村元彦、以下:沢井製薬)は、「製剤添加剤中の反応性NOx量を新規評価指標としたニトロソアミン生成のリスクを抑えた新規製剤開発手法の確立」の開発に関し、公益社団法人 日本薬剤学会より「旭化成創剤開発技術賞」を受賞しましたので、お知らせいたします。
旭化成創剤開発技術賞は、国際的な製剤の品質に関する考え方の変貌に応える製剤・創剤開発の基礎及び応用に関するハード及びソフトの優れた研究を対象としています。この賞は製剤の実用化・製剤の物性研究・設計・試験法・工程管理・包装技術・品質保証に関わる研究、その他、製剤・製剤開発に貢献する研究において、国際的に高く評価され得る医薬品製剤の開発に必要な製剤化の新しい科学と技術の発展に顕著な功績を挙げた者に対して与えられるものです。
ニトロソアミンはアミンと亜硝酸などの窒素酸化物(以下、NOx)が化学反応して生成される有害物質です。全てのNOxがニトロソアミンになるわけではありませんが、医薬品の添加剤にはさまざまなNOxが含まれる場合があります。医薬品の製造においてアミンとNOxが接触することでニトロソアミンが生成される可能性がありますが、アミンやNOxの混入を完全に防ぐことは極めて困難です。本研究では、添加剤にアミンを加えて添加剤に含まれるNOxから強制的にニトロソアミンを発生させることで、添加剤に含まれる可能性のある全てのNOxの種類や量を把握しなくても、ニトロソアミンの発生リスクを予測することが可能となります。さらに、蓄積したデータをもとに、ニトロソアミンの生成リスクを判断することで効率的な製品開発が可能となります。本研究は弊社オリジナル技術ブランドであるQualityHug®(クオリティハグ)の1つであるNOXANA®(ノクサナ)として商標登録されております。
■ 受賞概要
<受賞内容>
製剤添加剤中の反応性NOx量を新規評価指標としたニトロソアミン生成のリスクを抑えた新規製剤開発手法の確立
<受賞者>
山本浩之(物性研究部)、香川千乃(物性研究部)、三村尚志(物性研究部)
<受賞理由>
近年注目を集めている医薬品製剤中の有害物質であるニトロソアミン発生に関して、亜硝酸塩濃度のみをリスク指標としている現状から、全てのNOxの種類と量を特定せずに、潜在的なリスク因子として活用しようとする本手法は、新規性に富む戦略であるとともに簡便で汎用性が高いことが評価されました。さらに、各種添加剤に関してデータベース化も進めており、また、具体的な製剤処方により、その妥当性、有効性も確認しています。今後の医薬品製造における活用が期待され、患者さん及び医療現場の安心安全のニーズにも応えるものであることが評価されました。
<受賞者コメント>
ニトロソアミンはアミンと亜硝酸などのNOxが同時に存在することで発生します。一因であるNOxは添加剤などの原料に微量に含まれますが、各添加剤の全てのNOxの種類や量を評価・管理するのは困難です。この課題に対応するため、添加剤中に含まれるNOxのうち製剤中で実際にニトロソ化反応に関与するNOx(反応性NOx)量を評価し、添加剤や製剤構成成分における潜在的なニトロソアミン生成量を推測する技術(NOXANA®)を開発しました。NOXANA®により、開発段階から製剤中のニトロソアミン生成量を見える化することで、製剤中でのニトロソアミン生成量の低減を目指します。(山本浩之)
製剤中へのニトロソアミン混入が世界的に問題となり始めた当初、ニトロソアミンの生成要因が多岐にわたるという情報は多くあるものの、画一的な対応策はありませんでした。今回開発した技術は、多くの医薬品で重複して使用される添加剤に着目したことで、個別の医薬品における潜在的なニトロソアミン生成リスクを定量的に評価することができるようになりました。見えない不安を少しでも低くできるよう、これからもお薬を服用される方に寄り添える存在となりたいと思っています。(香川千乃)
この度、高く評価いただいた本研究成果を創出できたのは、2018年7月にバルサルタン原薬からNDMAやNDEAが検出されたことをきっかけに医薬品業界で俄かにニトロソアミン問題が重篤な事態となり世界的にも未だニトロソアミンの管理・研究指針が出てきていない中、自ら活路を開くべくいち早く研究に着手したことが大きな要因であったと思います。これからも私たちの科学と技術で患者さんに寄り添った品質の医薬品をお届けします。(三村尚志)
左から山本浩之、三村尚志、香川千乃
<授賞式>
2025年5月22日(木)~24日(土)に開催される日本薬剤学会第40年会にて受賞式および受賞講演が予定されています。
■ QualityHug®およびNOXANA®について
QualityHug®は、科学と技術で患者さんの心配や不安に応えていく沢井製薬のオリジナル技術ブランドです。このブランドに含まれる技術の選定基準は、当社が持つ多くの技術のなかから、「安全という意識を醸成する・安心を提示することができる技術」と定義しました。その結果、自身の服薬や生活に対して「大きな安心の提示」に貢献する新規性の高い技術群となりました。ニトロソアミンの生成リスク対策技術や、薬の表面に特殊な転写を施すことで偽造医薬品問題への活用にも期待できる技術が含まれています。製薬技術を一般化し、患者さんへ安心を届ける取り組みとして評価をいただき、2024年にグッドデザイン賞を受賞しました。
QualityHug®の詳細はこちらから:
https://www.sawai.co.jp/medicine/sawaigenerics/research/qualityhug/
NOXANA®の詳細はこちらから:
https://www.sawai.co.jp/medicine/sawaigenerics/research/qualityhug/noxana/