サワイのDNA - 社員インタビュー 製剤化への想い
患者さんが少しでも楽になれるように

製剤研究部 製剤Ⅱグループ金井 匡平

製剤研究部 製剤Ⅳグループ池治 宣晃

“製剤化”とは何なのか

金井

私たちが行う製剤化の仕事とは、ジェネリック医薬品の処方設計をすることです。どんな添加剤を使うか、どんな製法で作るかを考え、カタチにすること、と言えると思います。

「製剤化と言っても、ジェネリック医薬品なんだから、新薬(先発医薬品)と同じように作るだけでは?」と思われるかもしれません。確かに私たちが作るジェネリック医薬品は、新薬と有効成分が同じで、効き目や安全性が同等であることを求められるので、まずはそれを満たすことが最低条件です。そのうえで私たちが取り組むのは、「なによりも患者さんのために」という想いを反映した製剤工夫を凝らすことです。

新薬と同等の効き目をもちながらも、患者さんにとってより飲みやすい、より使いやすいものにする。それにはどうすればいいのかということを日々検討し、実行に移しています。

池治

例えば、味について。お薬はたいてい、そのままだと苦いので、物理的に苦味をマスキングしたり、あるいはフレーバーや清涼感のあるものを用いて、官能的に苦味を抑制したりして、飲みやすく改善します。味だけではなく形や大きさに関しても、どうすればより服用しやすくなるのかということを考え、改善を加えます。また、保存するときの安定性をいかに高めるかという部分にも取り組みます。

製剤化の仕事の困難

池治

課題はたくさんあります。簡単な例としては、口の中ですぐに溶ける口腔内崩壊錠の場合、まずは口の中で溶けやすい“崩壊性”がきちんと確保されていることが大切です。一方で崩壊性を高めると、輸送中に割れやすくなってしまうという側面もあります。だから、口の中では崩壊しやすく、輸送中には割れにくいという相反する要素を両立させなくてはなりません。

金井

また特許による難しさもあります。ジェネリック医薬品の発売にあたっては、有効成分に対する“物質特許”が切れていることが前提になりますが、お薬を作るにあたっての“製法特許”や“製剤特許”は切れていないことが少なくありません。だから、先発医薬品と同等のものを作る必要があるのに、材料や作り方は同じものを使えないということが往々にしてあります。そんなふうに、「特許を回避しながら求められる仕様にする」というのがとても大変なのです。

そんな製剤化の仕事をたとえれば、“レシピを作ること”とも言えるかもしれません。患者さんが使用するときのことをイメージしながら、材料や作り方を設計していく。設計にあたっては、どうすれば工場で生産しやすいかといったところまで考えます。

ある治療薬のジェネリックが、なぜ一つだけなのか

金井

製剤化の一例として、私たちが発売したある治療薬の製剤化のお話をします。

このお薬は、ジェネリック医薬品としては国内唯一の製品です。なぜ、このお薬しかないのかというのはさまざまな要因が考えられますが、一つは製剤特許の厳しさがあると思います。

まず、先発医薬品と同様に、「カプセル」と「ドライシロップ」の2つの剤形で製剤化する必要がありました。ドライシロップとは水に溶かして飲む顆粒状のもので、主に小児用として使われます。

このドライシロップの製剤化には、先発医薬品に製剤特許があるため、添加剤の種類や配合割合などの制約がありました。同じ剤形・用法のものを作る必要があるのに、先発医薬品で使われている添加剤のうち約8割が使用できず、材料を大きく変えなければなりませんでした。

また、備蓄を考慮して平均よりも長く有効期間が設定される製剤については、安定性についても長い期間の確保が必要とされるのですが、この製剤もそれに該当したため、その苦労もありました。他にも、有効成分の安定供給に課題があったり、長期服用をするものではないため、利益が想定しにくいといった要因も関係していると思います。そうしたさまざまな“ハードル”をクリアしていくことが関連部署を含めた私たちの仕事ではありますが、この製品に関しては開発期間が短かったこともあり、特に大変だったのをよく覚えています。

どのようにして“ハードル”を越えたのか

金井

やはりドライシロップの製剤特許を回避して製剤化するところで特に苦労しました。なかでも試行錯誤を繰り返したのが、“味”です。

このお薬の有効成分には、そもそも強い苦味があります。だからドライシロップであっても、苦さが残ってしまう。私自身、子どもが苦いお薬を苦労して飲んでいるのを目の当たりにしていたこともあり、気になっていました。

そうしたなかで行き着いたのが、多孔性の特殊な添加剤を使うことです。無数の穴が空いたスポンジのような添加剤を組み合わせることで、苦味成分がそこに引っかかり、苦味がだいぶ抑制されることがわかったのです。そして、この製剤技術で当社自身が特許を取得することもできました。自分の仕事が特許という形になったときは、苦労したこともあって本当にうれしかったですね。

池治

他にも難しい課題はいろいろありました。カプセルの製剤化で特に困難だったのが、カプセルの崩壊性を長期間にわたって担保することです。使用したのはゼラチンを含むカプセルなのですが、これは中に入れる添加剤によってカプセルの不溶化が進行し、カプセル自体が崩壊しなくなる弊害がよく起こります。だからそれが起きないように、添加剤の種類や量に関してさまざまな検討を重ねました。

またカプセルの大きさも、手に持ちやすく飲みやすいサイズ、ということを念頭に設計しました。

金井

改めて当時のことを振り返ってみると、開発期間中は、やればやるほど課題が出てくるぞという感じで(笑)、本当に忙しかったです。

製剤化という仕事のやりがい

金井

同じ製剤化であっても、開発するものが毎回違うことにやりがいを感じます。そのたびに新たな有効成分と向き合い、添加剤や作り方などに試行錯誤を重ねていく。大変な部分も多いですが、新しい発見もたくさんあります。自分の考えたとおりに結果が得られればもちろんうれしいですし、逆にまったく違う結果が出てきたとしても、今までわからなかったことがわかって楽しい。そこが非常におもしろいですね。

池治

製剤化という仕事は、お薬の溶け方や体内での吸収のされ方などさまざまな特性を先発医薬品に合わせたり、保存するときの安定性を改善したり、多くのミッションが待ち受けています。そのミッションをクリアするために、新たな添加剤を組み合わせてみたり、違う製法を試してみたりする。それが実験であり、パズルのようでもあり、探求でもあり、純粋に楽しいです。

自分にとって「なによりも患者さんのために」とは

金井

当社の企業理念である「なによりも患者さんのために」には、いろいろな意味が含まれていると思います。そのなかで製剤化を担う私たちが特に重きを置いているのが、「まずは、“なによりも”早くジェネリック医薬品として世に送り出すこと」です。それによっていち早く患者さんの経済的な負担を軽減できますし、国の医療費を節減することで社会貢献もできるからです。

それとやっぱり、いかに患者さんに喜ばれる形で製剤化するか、いかに使用しやすいお薬を届けるかというのは、常に考えています。

池治

私も同じように、溶けやすいとか、手に持ちやすい、飲みやすいといったところを特に気にして製剤設計しています。患者さんがお薬を飲むときの負担を、少しでも小さくすることができたらいいなと。

金井

ふだん、私たち製剤に携わる者は、目の前の「いかにして課題をクリアするか」ということに集中しています。先ほど申し上げたとおり、探求を深めていくことは研究者としてのやりがいです。

しかし、ふと立ち止まって考えてみると、それは、より使いやすいお薬を作ることであったり、たとえ難しい製剤化であっても、その壁があることでそれを乗り越えたとき、患者さんの経済的な負担を減らすことができたと実感することができる。つまり誰かのためになることにつながっている、と思えるのです。

池治

だから、担当したお薬がたくさんの患者さんに使われていると、「あっ、自分たちの改善や工夫が、患者さんのお役に立てているんだな」と感じられて、素直にうれしいと感じます。

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