サワイのDNA - 社員インタビュー 製品改善への想い
改善し続けることは“責任”でもある

戦略企画部 戦略企画グループ齊藤 陽太

営業推進部 推進1グループ池田 良輔

「製品を改善する」とはどういうことか

齊藤

私たちの製品は、「一度発売したら終わり」ではありません。

患者さんや医師・薬剤師の皆さまの声をもとに、すでに販売している製品の改善を行っています。例えば、錠剤を包装シートから取り出しにくいという声があれば取り出しやすいシートに変更したり、パッケージが他の製品と見分けづらいという声があればパッケージのデザインを変えたり。そうした製品改善の中心となるのが「CS会議」です。

CSとはCustomer Satisfaction=顧客満足のことで、CS会議ではさまざまな部門の担当者から、患者さんや医療現場の声が集められます。ときには特定のテーマで医療関係者の皆さまにアンケートをとって、その回答をメンバーで協議することもあります。各部門の代表が横断的に集まるのがCS会議の特徴で、15部署から計20人ほどが出席し、毎月開催しています。

CS会議では、このようにしてあがってきた患者さんや医療現場の声、また、メンバーの改善アイデアを、さまざまな角度から検討しています。例えば、医薬品の厳しい規制や科学的な観点から当社で対応できるのか、議論を重ね、検討しています。

その結果、改善の必要があるとCS会議で判断されると、上位の会議体に提案し、当社として対応するかどうかを最終決定します。

製品の改善=患者さんの声に応えること

池田

薬剤師さんから、錠剤に施された印字が見づらいという声がよくあがっていました。これまでは技術的に印字できる文字の表記に限界があったのですが、最近は技術の進歩で多くの文字を入れられるようになり、新製品では、すでにこうした技術を採り入れています。

ただ、販売中の製品の印字を変えるのは、なかなか大変です。生産工程も変わりますし、印刷機も新たに導入しなければなりません。その製品を採用していただいている医療機関への説明も必要になります。ひいては、製造コストがプラスされることになりますので、そのようなことを加味して、CS会議で検討しています。

齊藤

当社は800品目以上の製品を販売していて、その品目数は業界でもトップの水準です。これだけたくさんの製品の改善検討について議論しているのがCS会議ですので、責任は重大です。

池田

私たちは直接、患者さんの声を聞くこともありますが、多くは、医療関係者の皆さまを通して患者さんの声を聞いています。ですから、医療関係者の皆さまの声に応えるということは、その先の患者さんの声にお応えすることにもなります。私たち沢井製薬はそこに重きを置いて、多くの製品の改善を行ってきました。

錠剤を半分に割るための「割線」という切り込みを新たに入れたケースがあります。病院は膨大な品目数のお薬を扱っているので、例えば「2.5mg」と「5mg」という2つの規格があるお薬の場合、両方採用すると保管スペースの負担になってしまいます。そこで新たに割線を入れ、必要に応じて半量となるように、専用カッターやハサミで半分に割りやすくしました。

齊藤

あるお薬のケースでは、薬剤師さんがお薬を箱から取り出す際に、他のお薬とパッケージが似ていて間違えやすいという声が発売後にあがりました。薬剤師さんが万が一取り違えてしまうと医療過誤になってしまうので、パッケージのデザインを変更しました。医療過誤につながるといった声があれば、積極的に改善していきたいと思っています。

同じ製品を複数回にわたり改善する場合も

池田

薬剤師さんは、患者さんのさまざまな状態にあわせて、調剤を行っています。

齊藤

あるお薬では、安定性(温度・湿度・光などの影響による品質の変化の有無)の問題から、湿度の影響を軽減するために気密性の高い包装シートに入れた状態で出荷しており、薬剤師さんがその包装シートから取り出して患者さんに渡すことができませんでした。そのため、医療現場からは「包装シートから取り出した無包装の状態でも安定性をよくすることはできないのか」という声が多くあがっていました。そのご要望に応えるために、私たちは検討を行いました。技術的に容易な検討ではありませんでしたので、研究開発部門や生産部門ではとても苦労しましたが、無事、安定性を改善することができました。

池田

このお薬を必要とする患者さんは多く、販売数量も多いため、安定性の改善による成果は、非常に大きかったと思います。他社の製品を使っていた医療機関が「この改善であれば」と、当社の製品に切り替えてくださったケースもありました。

齊藤

この製品に関しては、こうした安定性の改善を、時代のニーズの変化や科学技術の進歩に合わせて、販売開始後から2回行っただけではなく、包装シートから取り出しやすくする改善も行っています。このような大がかりな改善を行うには、CS会議だけではなく、いろいろな関係部署が連動して動く必要がありますので、多くの時間とコストもかかります。

ですから、一度発売された製品をその後何回も改善するということは、規制が厳しい製薬業界ではなかなかできることではありません。まさに、私たちのCS向上に取り組む姿勢が表れている事例なのかなと思います。

製品の改善をするうえで、特に難しいこと

齊藤

当社がCS向上に積極的に取り組んでいるとはいえ、製薬企業としては新製品を開発することも重要です。ですから、すでに販売している製品の改善は、一般的に企業としての優先順位がどうしても低くなりやすい、そこがこの仕事の難しいところです。ただ、やはり企業は利益を出さなければいけないところですし、リソースには限りがありますので、優先順位をつけなければならない点は仕方がないと思います。

だからこそ、経済的な観点もふまえながら改善することの目的をきちんと明確にし、リソースなどの制約があるなかで企業として実行につなげることが、とても重要になってくるのかなと考えています。また、医薬品には求められるルールにより確認事項が多く、科学的に実行できるかどうかの確認も必要です。また、ルールで定められた試験に時間を要する場合は、医療関係者の皆さまや患者さんの手元に改善した製品が届くまでに、長い時間がかかってしまうことも難しさの一つです。

ジェネリック医薬品の普及率は、もうすぐ80%に届こうとしています。そんななか、当社はジェネリック医薬品のリーディングカンパニーとして、年間に110億錠以上を販売しています。そして医薬品というものは、一度発売されたら多くが何十年と使われ続けるものです。だから私たちは、社会的な“インフラ”を支えていると言ってもいいのかもしれません。

社会的なインフラだとすれば、発売した後も改善を重ね、時代のニーズに合うものを提供し続けるということは、ある種「責任」でもあると思うのです。

一番大切な場所に立ち返らせてくれる言葉がある

池田

現場の声をもとに実際に製品を改善することで、患者さんは医療機関から改善の説明を聞くことになりますし、「自分の声が会社に届くんだ」とも思ってもらえるかもしれません。ですから、改善によって、当社に対する患者さんからの信頼も高められると考えています。患者さんや医療関係者の皆さまからの信頼が、結果的に販売実績にもつながってきますので、現場の声に耳を傾けることは、本当に重要だなと思います。また、たとえすぐに改善につながらなくても、改善点を今後の新製品に反映させることができます。

私は長く営業の現場にいましたので、自分やチームの実績はどうなのか、あとどのくらい目標に足りないのかなど、販売実績に意識がいってしまいます。そんなときに、“自分の仕事はただ売上を稼ぐためだけじゃないんだ”と気づかせてくれるのが、当社の企業理念である「なによりも患者さんのために」という言葉であり、私を仕事の一番大切な根幹に立ち戻らせてくれます。

齊藤

本当にそのとおりで、やっぱり人間ですので目先のことにとらわれてしまうんですよね。私が過去、研究開発部門で業務をしていた頃は、製品の処方設計をどうしようかとか、工場でどのように量産化しようかとかで、常に頭が一杯でした。でもこの言葉によって、自分たちは医薬品を通して患者さんに貢献しているんだ、だから製品が最終的にどう使われるのかをイメージしなくてはいけない、ということを思い出すことができる。あらためて、いい言葉だなと思います。

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